地域創生のための写真映えするライトアップ施策 ~オフラインとオンラインの連動~

開催日 : 2021年02月03日

協力 栃木県足利市

足利市では「あしかがフラワーパーク」のイルミネーションに連動して市街地の文化財を活用したライトアップ施策に注力されています。2020年11月には、国宝「鑁阿寺(ばんなじ)」および日本遺産に指定された「足利学校」のライトアップ施策を実施、東京カメラ部は本イベントの告知、ライトアップのコンサルティング、写真撮影をサポートいたしました。
今回は、「地域創生のための写真映えするライトアップ施策 ~オフラインとオンラインの連動~」と題して、一般社団法人足利市観光協会 事務局長 吉田氏、足利市 産業観光部 観光振興課 石川氏にお話を伺いました。

登壇者

一般社団法人足利市観光協会 事務局長 吉田 雅裕氏

一般社団法人足利市観光協会 事務局長

吉田 雅裕

  • 2002年4月~ 足利市役所入庁 保健衛生業務や人事・職員研修業務に従事
  • 2013年4月~ 神奈川県大和市へ派遣(2年間)。観光・イベント業務に従事
  • 2017年4月~ 観光振興課に異動。夜景観光業務に従事
  • 2018年4月~ (一社)足利市観光協会へ派遣。引き続き夜景観光業務に従事し、「栃木デスティネーションキャンペーン」(春)や秋のイベントシーズンにおいてライトアップのイベントを実施
足利市 産業観光部 観光振興課 主査 石川 維氏

足利市 産業観光部 観光振興課 主査

石川 維

  • 2003年4月~ 足利市役所入庁 こども課配属 保育所・保育園入所案内等に従事
  • 2007年4月~ 生涯学習課北郷公民館 地域学級講座の企画運営業務従事
  • 2011年4月~ 秘書広報課 市長、副市長秘書業務・栄典業務従事
  • 2014年4月~ 史跡足利学校事務所 史跡足利学校の調査研究、国宝・重要文化財の管理や企画展示業務従事(元号の「元」となった国宝漢籍の展示公開担当)
  • 2020年4月~ 観光振興課 足利市内の伝統行事、イベントに関する業務を担当

東京カメラ部株式会社 執行役員 高山有仁

聞き手 : 東京カメラ部株式会社 執行役員 高山有仁

自己紹介

自己紹介をお願いします。

吉田氏:一般社団法人足利市観光協会 事務局長の吉田と申します。今回のテーマは「ライトアップ」ですが、この業務に関わり始めたのは2017年に足利市で開催された全国規模のイベント「夜景サミット」からです。この運営で初めて夜景観光の業務に従事しました。翌年2018年に、足利市観光協会に派遣後は、栃木県のデスティネーションキャンペーンに伴うイベントなどでライトアップを春秋2回実施しています。

石川氏:足利市 観光振興課の石川と申します。私は、今年度2020年度から観光振興課に異動になりまして、その前は6年間、史跡足利学校で学芸業務を担当しておりました。昨年・今年は元号が変わった時に元号をテーマに展示を行ったり、国宝の書籍を展示したり史跡内の管理をしておりまして、今年度から異動により観光振興業務に携わっております。

国宝「鑁阿寺」と日本遺産「足利学校」のライトアップイベント

国宝「鑁阿寺」と日本遺産「足利学校」のライトアップイベント

昨年2020年11月14日〜23日、足利市では国宝「鑁阿寺(ばんなじ)」と日本遺産「足利学校」でライトアップイベントを実施されました。足利市さんで、ライトアップ施策をお始めになった、注力されるようになった経緯について、ご説明いただけますか。

吉田氏:足利市は「足利銘仙(めいせん)」という、大正時代から昭和初期にかけて大流行した着物の産地です。いま我々が着ている法被が足利銘仙です。「足利銘仙」は、色が鮮やかで柄もたくさんありまして、その柄をモチーフとした「銘仙行灯(めいせんあんどん)」を使ったライトアップに力を入れています。
また、足利市はライトアップのスポットとして「あしかがフラワーパーク」のイルミネーションが有名です。「あしかがフラワーパーク」は、足利市の東側にある植物園・テーマパークですが、日本三大イルミネーションのひとつにも認定されるほど全国的に有名な所です。一方、足利市の中心部には、国宝である「鑁阿寺」や、日本遺産である「足利学校」が遺っています。そちらも和のあかりでライトアップして、違った切り口で観光誘客を図れないかということで5年前から「銘仙行灯」を用いて観光誘客に力を入れ始めるようになりました。
フラワーパークの「光(ひかり)」に対して市内中心部「銘仙行灯」の「灯り(あかり)」の対比のなかで観光誘客を足並みそろえて進めていく流れとなりました。

東京カメラ部に依頼した経緯・理由

今回、「鑁阿寺」および「足利学校」のライトアップ施策に関し、東京カメラ部にご依頼くださった経緯・理由を教えていただけますか。

吉田氏:4~5年前から春と秋を中心にライトアップを行っていくなかで、ライトアップのイベントを実施すると写真好きの方が多くお越しになる、ということに気づきました。一か所でずっと満足のいくまで写真をお撮りになる方が多くいらっしゃって、写真好きの方々に満足してもらえるライトアップをすればもっと多くの方に来ていただけるのではないか、と考えたことがまず1つめの理由です。
2つめの理由としては、今までのイベントは職員が素人の発案で色々考えて実施していましたが、今回はプロにライトアップをお任せしたらどうかという声がありまして、足利市のシティプロモーションの部署で2018年から連携している東京カメラ部に声をかけました。東京カメラ部は、国営公園「昭和記念公園」、京都にある世界遺産「仁和寺」でライトアップ支援の実績もあるので、お願いして間違いないと考えました。
以上の理由から、2020年の11月に東京カメラ部協力のもとで国宝「鑁阿寺」および日本遺産「足利学校」のライトアップイベントを実施しました。

今回のライトアップ施策の目的

今回のライトアップ施策の目的を教えていただけますか。

吉田氏:今回のライトアップの一番の目的は、ライトアップイベントを実施することでお越しになった方々に地元にお金を落としてもらうことでした。具体的には、足利市にお客様に来ていただいて、イベントを楽しんでもらい、お土産を買っていただいて、飲食店で食事をしていただき、できれば宿泊していただく、ということを狙って実施しました。
また今回は、写真好きの方をターゲットにしましたので、その方々にきれいな写真を数多く撮ってもらって、SNS等で発信していただき、われわれ自治体職員だけではなく、写真家の方にもライトアップをPRしていただくことで、コロナ禍のなか、出かけられない方がその写真をみて、「足利いいところだな、きれいだな、行ってみたいな」という思いを持っていただく。そして今後来ていただく、その種まきをすることも狙いです。

東京カメラ部SNSアカウントでの告知効果

今回の足利市さんのライトアップは、東京カメラ部のSNSアカウントで告知投稿した結果、延べ25万人の方にリーチし、多くの方にこのイベントを知っていただきました。ご来場者数は、6,000人を超えたそうですね。

吉田氏:私は4年間イベントに携わっていますが、そのなかでは最高の数字となりました。特に秋の三連休の中日は1,700人近くお越しいただきました。また、平日でも200人はコンスタントにお越しいただき、告知投稿の効果がありました。足利市観光協会のInstagramアカウントでも告知投稿したのですが、いいねが52件ほど。
一方、東京カメラ部SNSアカウントでの告知投稿はいいねが8,000件ほどで反響の大きさに驚きました。

ライトアップ施策のポイント

次に、実際にどのような写真が撮れたかを見ていきましょう。今回は、「鑁阿寺」と「足利学校」をライトアップしました。

足利学校

photo by 東京カメラ部10選 清田大介

「鑁阿寺」は国宝、「足利学校」は日本遺産です。ライトアップの許可を得るのは難しそうですが、どのように進めていかれたのでしょう。

石川氏:実際、多くの制限があるわけです。例えば、足利学校の場合ですと、杭を数十センチ打ってはだめだ、とか、参観時間や参観料金も条例で決まっています。お互い施設長などと話をして、どうやったら出来るか、という妥協点を見つけながら粘り強く交渉していった結果、開催することができました。
「足利学校」事務局の所長さんがカメラ好きでいらして、ご理解を得ることができたのも開催できた大きなポイントだったと思います。

写真の効果をご理解くださっている方がいらっしゃることは、大事ですね。

鑁阿寺

ご来場くださった方々が、素敵な写真とともにたくさんSNSに投稿してくださいましたね。

吉田氏:はい。今回ご協力くださった地元商店街の方もTwitterで投稿くださいました。今回のイベントの目的は、地元にお金を落としてもらうことであるとお伝えしましたが、その手段として、ライトアップスポット「鑁阿寺」と「足利学校」を結ぶ導線上の商店街で使える商品券を発行しました。
地元のお店と連携して、ライトアップ期間中に開店している店には、商品券を使えるようにして、お店を開けていただきました。合計25店舗のお店に協力いただき、会期10日間合計で37万円近い商品券利用がありました。
商店街のお土産屋さんでは、期間中に用意したお汁粉が完売になるほど評判が高く、イベントが終わった後、お店の方に、「今度はいつイベントをやるのですか」、「またやってくれませんか」というご要望をいただきました。

コロナ禍での対策

ライトアップイベントでは、コロナ対策も実施されましたね。

吉田氏:足利市で示されている「イベント開催基準」に則りまして、来場者のマスク着用の促進、入口での消毒液の設置、検温、ソーシャルディスタンスの確保等を実施しました。
加えて、今回は「写真を撮る」というコンセプトのライトアップでしたので、「自撮り台」を用意し、他の人に撮影を頼まなくても、自撮り台にカメラを載せてご自身でタイマー設定して自分も被写体に加わることができるようにしたこともコロナ対策のひとつです。

ライトアップのポイント

地方創生ができるライトアップとして、”「今」稼ぐためには”、と ”「未来」に稼ぐために投資するには”の2つの観点があります。
”「今」稼ぐため”のライトアップには、いくつかの要素がありますが、「目で見て綺麗」かつ「写真で撮っても綺麗」なライトアップをすることで、実際に撮りに行きたいと思っていただくことが重要です。
カメラと人の目は違いますので、綺麗に見えるライティングも異なります。目で見て綺麗な範囲で、写真が撮りやすいライトアップを目指すとよろしいかと存じます。
足利市さんのライトアップでもここを目指して、ライトアップの具体的なコンサルティングを行いました。

カメラの長所を活かすことも重要で、目とは違い、カメラは弱い光をとらえられるので、リフレクションなどの特徴を表現することができます。リフレクションは、写真映えのポイントのひとつです。実際にご覧になって、いかがでしたか。

足利市の広報誌「あしかがみ」の表紙

石川氏:あまりにも今回撮影した写真が綺麗でしたので、足利市の広報誌「あしかがみ」の表紙に採用しました。普段なら、広報担当の職員が撮った写真が表紙になるのですが、今回は特別に東京カメラ部の投稿者の方の作品を使わせていただきました。ありがとうございました。

商店街や町全体で稼ぐこと

地方創生”「今」稼ぐため”のライトアップ施策として「商店街や町全体で稼ぐ」ことを実施することも重要ですね。

吉田氏:そうですね。今までライトアップのイベントでは、ライトアップのスポットは煌々(こうこう)ときれいに光っているのに、周りの店が真っ暗、営業していないという状況でライトアップ実施の時間にいかに店を開けてもらうかが課題でした。今回はその課題をクリアしたいと考え、お金が落ちることでお店にメリットがあれば、営業時間を延長したり、臨時で営業してもらうこともできるのではないかと個々のお店に交渉し、結果的に25店舗にお店を開けていただきました。
イベントの会期は10日間だったのですが、そのうち「足利学校」を公開した5日間入場料300円をお支払いいただいた方には、300円分の商品券を差し上げる、という仕組みでお渡ししました。お受け取りになったお客様にはどこでその300円を使えるのか分かるよう、使えるお店一覧のマップを配りました。商品券の配布枚数は1,262枚、使われたのは1,096枚、金額にして328,800円の消費がありました。
一番売れたところは、「鑁阿寺」の入口のわらびもちのお店で、227枚(68,100円分)使われました。これはあくまでも商品券をお使いになった額面ですが、実際には現金でもお買い上げになった方も多くいらっしゃったと思うので、商品券の額面以上の経済効果があったのではないかと考えています。

商品券「300円」というのは、上手な値段設定ですよね。私も開催期間中に足利市さんに伺ったのですが、300円で買える商品はあまりなくて現金を足して買うことになり、そうすると他の商品も、といろいろ購入しました。
また、私個人も当日飲食したり、宿泊したりしましたので、全体の経済効果は大きかったのではないかと思います。

「街全体で稼ぐ」ということについては、先ほどお話のあった足利銘仙という着物のPRもなさってて、PRの写真用にモデルさんに着物を着用いただいて撮影しました。
ライトアップ期間中に、足利銘仙の着物のレンタルもされていましたね。

足利銘仙の着物

photo by 東京カメラ部10選 清田大介

吉田氏:そうですね。今回はこの写真を利用して告知を実施しました。モデルさんが被写体となったプロの写真家の作品で告知したので、かなり反響がありまして、これまで実施したイベントでの着付け体験のなかで一番多い利用があり、計27名がご利用くださいました。
数字だけ見ると少ないと思われるかもしれませんが、申し込みは少ないと思っていた平日の夜間ですら対応スタッフのアサインに苦労するほど反応がありまして、大変ありがたかったです。

ご来場者のSNS投稿

地方創生ができるライトアップとして、”「今」稼ぐためには”、に次いで、もう一つの観点”「未来」に稼ぐために投資するには”に関しては、お越しになったみなさまにいい写真を撮ってもらって投稿してもらうということがポイントになりますが、その中では特に「自撮り」ができるかどうか、綺麗に撮れるかどうかが非常に大事になってまいります。
いろんなところでライトアップされていますが、写真が撮りにくくてかつ自撮りしようとすると自分の顔が暗くて撮りにくい場合が多いです。足利市さんとのライトアップ検討では、この場所に立ったらその人の顔にライトが当たる、と言う場所を作って、自撮りしやすいようにしました。
それ以外にも先ほどご紹介いただいた「自撮り台」をご用意いただきました。

自撮り台

吉田氏:この自撮り台は、「足利学校」の復原にも携わった地元の大工さんに制作を依頼した木製のものです。スマホが置ける水平な台にし、一眼レフをおいても滑らないシートを貼りました。
また、高さも調整可能です。大工さんと試行錯誤しながら作りました。ライトアップのテストの際、東京カメラ部に確認いただき、OKをいただけたため、今回の6箇所の撮影スポットに設置しました。

本日は、貴重なお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。

自撮り台

ご参考:東京カメラ部「ナイトタイムエコノミー施策一覧」

東京カメラ部のナイトタイムエコノミー取り組み事例

当日のセミナーでは、「コロナ渦におけるライトアップ施策のメリット」「地方創生ができるライトアップ」についてもご説明いたしました。現在ライトアップ施策をご検討中で内容にご興味のある方には個別にご説明いたしますので、以下の弊社窓口までお問い合わせください。

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