広島県観光連盟×大聖院×東京カメラ部「2千円でも1,000人以上が来場!コロナ禍でもできる新たなナイトタイムコンテンツ創出事業~写真映えするライトアップイベント~」

開催日 : 2021年06月17日

協力 広島県観光連盟、大聖院

コロナ禍の現在、そして未来に向けて、今何に取り組むべきかをお考えの皆様への参考情報として、本対談を企画しました。
今回は、観光庁「令和2年度 夜間・早朝の活用による新たな時間市場の創出事業」に採択され昨年実施した、広島県 宮島大聖院の初のライトアップイベント「紅(あか)もみじライトアップ2020」事業を推進された一般社団法人広島県観光連盟と宮島大聖院をお招きし、ライトアップをプロデュースした東京カメラ部が聞き手となり、本事業のポイントや考察をお話しいただきました。

大聖院は、広島県廿日市市宮島町にある真言宗御室派の大本山の寺院で、関西屈指の名刹です。また、桜や紅葉など花の名所としても有名な寺院です。

本対談では、コロナ禍における宮島 大聖院の現在の取り組みを百々さま、吉田さまからご紹介いただきました。また、弊社高山から、政府、自治体など多数の公的機関SNS運営代行やオンライン、オフラインで日本各地の観光・支援を多数経験している東京カメラ部として、具体例を交えながら以下の点をご紹介いたしました。

  1. 1)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の収束時期が読めない中ではあるが、人々の旅行意欲は高まっている。旅行先として忘れられないよう地域から発信していくことが重要
  2. 2)宮島 大聖院ではコロナ禍でできることとして、ライトアップ、早朝・夜間のインスタミート、早朝・夜間のフォトスポット開発を実施
  3. 3)夜間・早朝の時間は、そもそも「写真撮影」と相性がよい。コロナ禍でSNSと連動して実施する夜間・早朝時間を活用した施策は、来られない方に向けてもオンライン上でPR・関係人口を創出できる、という観点からも非常に有効

詳細な対談の様子は以下のとおりです。皆様の参考になれば幸いです。

登壇者

一般社団法人広島県観光連盟 マーケット開発グループ 主幹 百々隆雄氏

一般社団法人広島県観光連盟
マーケット開発グループ 主幹

百々隆雄

  • 生まれも育ちも安芸の宮島、実家は表参道商店街「お好み焼きももちゃん」。
  • 大学卒業後、広島電鉄(株)へ入社。主として観光関連事業に従事。
  • 2004年~2009年、広島経済同友会アニメーションビエンナーレ基金事務局長を拝命。アニメ・映画等コンテンツを核としたイベント、コンテンツ産業振興に取り組む。
  • 2019年、広島県観光課へ出向。外国人向け夜神楽公演を実施。「Japan Tourism Awards2019(国内・訪日領域ビジネス部門)」に入賞。
  • 2020年、広島県観光課の事業部門と広島県観光連盟の事業統合に伴い、現職。
大聖院 副住職 吉田大裕氏

大聖院 副住職

吉田大裕

  • 宮島で育ち、大学卒業後、京都にある総本山仁和寺にて修行。
  • 4年前に宮島に戻り、大本山大聖院副住職を拝命。
  • 宮島観光協会の理事を務めるなど、お寺と地域をテーマに活動中。

東京カメラ部株式会社 執行役員/企画営業部長 高山有仁

聞き手 : 東京カメラ部株式会社 執行役員/企画営業部長 高山有仁

出演者紹介

まず、聞き手の東京カメラ部株式会社の高山から自己紹介いたします。
大学時代、自治体経営について現場で仕事をしながら勉強し、卒業後、コスト削減コンサルティング会社に入社しました。その後、2015年に東京カメラ部株式会社に転職、現在は執行役員/企画営業部長として、自治体様や大企業様に写真やSNS運営を使ったプロモーションの企画推進を担当しております。

百々さま、自己紹介をお願いします。

百々氏:生まれも育ちも安芸の宮島で、実家は表参道商店街「お好み焼きももちゃん」。広島県観光連盟の百々と申します。広島電鉄という路面電車で有名な会社から、観光連盟に出向しております。
2004年から2009年まで、広島経済同友会アニメーションビエンナーレ基金に事務局長として出向、アニメや映画等のコンテンツを核としたイベントや産業振興に取り組んでまいりました。在籍時、お台場のガンダムより2年前の2008年に「国際ガンダム学会」を立ち上げ、Yahoo!ニュースなどに取り上げられ、話題になりました。
2019年に広島県の観光課に出向し、外国人向けに夜神楽公演を年40回実施、「ジャパンツーリズムアワード2019」の国内・訪日領域ビジネス部門に入賞いたしました。
広島県観光課の事業部門と観光連盟の事業統合に伴い、2020年からは観光連盟に出向しています。

吉田さま、自己紹介をお願いします。

吉田氏:大聖院で副住職を務めております、吉田と申します。私も宮島で生まれ育ちました。関東圏の大学を卒業後に、京都の総本山 仁和寺にて修行し、その後宮島に帰ってまいりまして、現在、大聖院の副住職を務めております。
宮島観光協会の理事も務めており、地域にも積極的に関わっております。
宮島の真ん中あたりには、厳島神社と大鳥居があります。大聖院は、宮島口桟橋から船に乗って渡って来ていただき、そこから神社よりもう少し山側に歩いたところにございます。
また、ロープウェイで行ける、宮島で一番高い山「弥山(みせん)」の温泉周辺、山頂の方とふもとの両方の維持管理も大聖院の役割でございます。

東京カメラ部のご紹介

今回の施策のお話をする前に、東京カメラ部をご存じでない方に向けて、まず簡単に東京カメラ部株式会社をご紹介します。弊社が運営する「東京カメラ部」は日本最大級の写真好きが集まるコミュニティ、審査制の写真投稿サイトです。
主な特徴は、以下の通りです。

  • 世界中の写真愛好家の方から、毎日約4万作品をご投稿いただいている「東京カメラ部」アカウント。その中から素晴らしい作品を選び、毎日7作品を東京カメラ部のSNSアカウントでご紹介、昨年は延べ11億人の方が閲覧
  • この運営ノウハウを活かし、日本政府観光局様、環境省様、浜松市様など地方自治体様、大手企業様の世界に向けた情報発信を支援。また、Twitter Japan様などSNSプラットフォーマー様からの仕事も受託
  • 投稿写真は、日経ナショナル ジオグラフィック社様から写真集が発売されるほど、レベルの高い作品
  • 幅広い業界でのフォトコンテストの実績多数。一括(企画、募集告知、運営事務局、審査/選定、賞品発送)で受託したフォトコンテストは、150件超

ナイトタイムエコノミー施策一覧

続きまして、東京カメラ部の「ナイトタイムエコノミー施策」をご紹介します。

  1. ナイトタイムのフォトスポットを見つけます
    ⇒ 「フォトスポット開発」
  2. PR用の写真素材を撮影します
    ⇒ 「全国の写真家派遣」
  3. 誰でも撮れる、発信したくなるような場所になるよう、磨き上げます
    ⇒ 「フォトスポット整備」
    ⇒ 「ライトアップ」
  4. SNS上で拡散します
    ⇒ 「SNS発信代行」「SNSアカウント運営代行」
    ⇒ 「フォトコンテスト」
    ⇒ 「インスタミート」
    ⇒ 「ライトアップ」
    「早朝」「夕景」「夜間」は、写真映えする時間帯で、「写真」と「ナイトタイム」は親和性が高いのです。

コロナ禍でできること

旅行先候補として忘れられないようにSNSで発信していくこと

現状の整理

今回のライトアップイベントご説明の前に、現状の整理として、コロナ禍でできることについて、考え方の前提を共有できればと存じます。
新型コロナワクチン接種が始まりましたが、全員にいきわたるにはまだ時間がかかりますし、変異株も出現し、新型コロナがいつ収束するか明確には分からない状況です。
コロナ禍において、今後の観光客誘客を考えますと、旅行先として忘れられてしまうことが一番まずいことだと思います。コロナ禍においては、旅行先候補として忘れられないようにSNSで発信していくことが重要です。
お客様のSNSのご利用は、コロナ禍で増えておりまして、どのSNSでも利用頻度が上がっております。ただ、Twitterは主にリアルタイム性の高い内容や新型コロナなどの情報収集、Instagramは主に趣味や好きなことに関する情報収集など、SNSツールごとに活用のされ方が異なります。
旅行先については、主にInstagramで情報収集されていますので、観光情報の発信は、現時点ではInstagramの活用が有効だと言えます。

広島県観光連盟×大聖院×東京カメラ部で行った3つの施策

観光庁の「令和2年度 夜間・早朝の活用による新たな時間市場の創出事業」として実施

今回実施した3つの施策とその効果

では、本題に入ります。今回は、観光庁の「令和2年度 夜間・早朝の活用による新たな時間市場の創出事業」として、以下の3つの施策を実施しました。

  • 「1.ライトアップイベント」
  • 「2.早朝・夜間のインスタミート」
  • 「3.早朝・夜間のフォトスポット開発」

この3つの施策で狙った「短期的な効果」は、

  • 「単価UP」: 宿泊につながることでの単価UP
  • 「街全体で稼ぐ」: 滞在時間が長くなることで、市内にお金が落ちやすい
  • 「近隣住民に来てもらう」: マイクロツーリズム対策になる
  • 「感染症対策」:屋外がメインで密になることを防ぐことができる

「長期的な効果」は、

  • 「将来的な観光客数UP」:質の高いコンテンツにすることで、SNSで発信してもらいやすく、「いつか行きたい」と思ってもらえる
  • 「観光客がPR部隊に」:お手本となる写真を拡散することで、来た人の写真の質UP
  • 「住む人がより街を好きになる」:シビックプライドの醸成
  • 「観光資源の創出」:新たな観光資源の発掘
  • 「インバウンド施策としても」:地元の人が評価するインバウンド施策

質の高いナイトタイムコンテンツを創出しSNSで発信する施策を実施することで、このように短期的にも長期的にも様々な効果が生まれます。
百々さん、この3つの施策の経緯や企画意図などのご説明をお願いします。

経緯や企画意図

百々氏:今回の事業は、観光庁の「令和2年度 夜間・早朝の活用による新たな時間市場の創出事業」の事業費を活用しました。
事業主体は、広島県観光連盟が事務局の「広島県夜の魅力づくり協議会」です。また、今回の事業は、広島市、広島商工会議所、広島観光コンベンションビューロー、廿日市市、宮島観光協会、中国経済連合会にご協力いただきました。
こちらの観光庁が公募している「令和2年度 夜間・早朝の活用による新たな時間市場の創出事業」に応募する際、我々の事業のテーマを「多様な交通機関・文化財等を活用した夜の魅力創出事業」としました。結果として、観光庁から採択されまして、実現することになりました。なぜ、我々の応募事業のテーマがこのようになっているか、詳細の経緯をお話しますと、観光庁による募集の際に、単独の自治体ですと1,500万円、但し、広域で実施する場合はその限りではない、という一文がございまして、よし、と思って出したのが今回の「多様な交通機関・文化財等を活用した夜の魅力創出事業」で、全11事業で4,000万円の事業規模で企画書を提出しました。

企画書には、私が広島電鉄出身ということもあり「ムービング ダイニング アウト」というコンセプトで、レストラン列車で広島の有名なレストランの料理を駅ごとに出していくイベントや、城を活用し探索する事業、また美術館の中でのイベントなどを盛り込みました。そのため、テーマを「多様な交通機関・文化財等を活用した」としておりました。

当初、企画全体で事業費4,000万円で提出したものの、その後、全国一律で事業費1,500万円に、となったため、企画の中で何を残すかを検討し、地元である宮島 大聖院の事業を是非ともやりたいということでこの企画案を残し、実現いたしました。
宮島は非常に有名な観光地で、日中は多くのお客さまがいらっしゃるんですけども、夕方になるとお店が全部閉まります。おじいちゃんおばあちゃんが営まれているお店が多く、長生きするためにはあまり無理しない、という背景があります。
よって、通常は夜になると全く人がいない宮島ですが、今回のライトアップ事業は、今までの日中中心の宮島の観光客の旅行パターンを変えるという意味で、大きな試金石になりました。事業主体である大聖院の吉田さんの思いを重ね合わせて、今回の施策は非常にうまくいったかなと、思っています。

次に、今回の事業は、以下の役割分担で進行しました。

役割分担

百々さん、今回の成功要因は「事業主体が大聖院」ということが非常に大きかったですよね。

百々氏:通常、このようなイベントは広告代理店などが間に入り、会場とイベント主体者をつなぐ役割を担いますが、今回は、大聖院自体が事業主体となって進めていただきました。広島観光連盟は、観光庁への申請・企画書の作成、豊富なノウハウを活かしてオウンドメディア等も含めたデジタルマーケティングを活用したPRを担当しました。
今回、大聖院さんがコアになって企画を進めてくださったことが、重要なポイントだったと思います。


宮島大聖院 初のライトアップイベント
「紅(あか)もみじライトアップ2020」

感染症対策をしつつ、観光消費単価を上げ、地域にお金が落ちる仕掛けまでを考えたライトアップ

まずは、今回の施策のひとつめ「紅(あか)もみじライトアップ2020」をご紹介します。
ライトアップは屋外で実施しますので、三密になりにくく人数制限をすれば感染症対策になりますし、また、地元の人にお越しいただきやすいという特長があります。そして、夜間に行いますので飲食や宿泊を伴いやすく、消費単価を上げることができます。

今回、大聖院としては初めてのライトアップイベントで、ご来場者の満足度を上げるために、複数のスポットをライティングしました。
吉田さん、国立公園内の大聖院ライトアップは、許可申請が大変だったのではないでしょうか。

大聖院ライトアップスポット

吉田氏:大変でした。宮島は国の史跡名勝地で、島全体が環境省の許可を必要とします。世界遺産・文化財に関連して、県や市とも調整が必要でした。許可が下りないとリハーサルも何もできません。百々さんが観光庁に申請した助成金が6月、ちょうど今ぐらいの時期に決まり、秋にライトアップということで、実施まで時間に余裕がない中、許可申請をトッププライオリティとしていろんな方に走り回っていただきました。

おっしゃるとおり、秋に実施する場合、遅くとも6月には許可申請に動き始めていないと難しいですね。特に世界遺産、文化財、国立公園などのライトアップの許可申請は、早め早めの準備が必要です。

東京カメラ部では「単価を上げても来てもらえるライトアップ」をサポートします。
「今」稼ぐために、「目で見て綺麗」かつ「写真で撮っても綺麗」なライトアップをすることで、実際に撮りに来たいと思っていただけるようなプロデュース、そしてお越しいただいた方に、お金を落としてもらう仕組み、を作っておくことがポイントだと考えています。
また「未来」稼ぐためには、来た人がSNSで発信をし、いつか行きたいと思わせるようにする必要があります。SNSでその写真をご覧になった方が、いつか宮島行ってみよう、大聖院のライトアップに行ってみようと思うきっかけになります。

「目で見て綺麗」「写真で撮っても綺麗」なライトアップについてポイントを絞ってお話しします。
「目で見て綺麗」「写真で撮っても綺麗」なライトアップを行うには、カメラの特性と目の特性は異なる、よって、その特性に応じた異なるライティングが求められる、ということを大前提としてご理解いただく必要があります。例えば、明るいところと暗いところの差が激しい場所は、目では見えていてもカメラでは撮影しにくい、カメラが苦手なところです。
また、光の色が混ざってしまうと、目では補正して見えていても、カメラでは撮りにくい。
カメラの長所としては、人の目と違ってシャッタースピードという機能があることで、弱い光でも撮影できます。カメラの苦手な部分や長所を考えた上でのライティングが重要なのです。

では次に、どこをライティングするか。「その場所とわかるもの」+「桜や紅葉」を掛け合わせたところにライティングすることが大事です。 全国各地でライトアップイベントが実施されていますので、どのように差異化するか、という観点でも「その場所とわかるもの」が被写体であることは重要なポイントです。
今回大聖院では、五百羅漢(ごひゃくらかん)がいらっしゃる、紅葉の道をメインにライトアップしました。

綺麗なところと独自性

吉田氏:五百羅漢は、10年ぐらい前に檀家さんから寄進していただきました。五百体いらっしゃいます。

プロデュースの下見で伺ったときに拝見したこの道が、非常に美しかったのです。写真をご覧いただくとわかりますが、紅葉した葉が道に敷き詰められ、道が少しS字を書く感じになっています。このS字カーブで立体感も出ていたので、メインのライトアップのスポットにしました。

綺麗なところ「だけ」目立たせる

また、大聖院の「摩尼殿(まにでん)」もライトアップしました。摩尼殿のような建造物の場合、ただ単純に光を当てればよいわけではありません。まずは、全ての場所にライトが当たるように付けて、スマホでパシャっと撮ってみます。撮影した写真を見ると、摩尼殿を引き立てるためには、木の幹や他の部分(右下)は写らないほうがよく、但し、紅葉は摩尼殿とともに写したほうがいい、となります。そのために手を加えたのは、ライトを正面からではなく、木と木の間に置き、建物には正面からではなく横からライティングするように変更しました。

綺麗なところ「だけ」目立たせる

その結果がこの写真です。先ほどの不要な部分が写らず、葉っぱが浮いているように立体的に写すことができます。
これは一例ですが、このように写真を撮りやすい、綺麗なところ「だけ」を目立たせるライティングが非常に大事です。

吉田さん、現地でご覧になっていかがでしたでしょうか。

吉田氏:ライトアップと言うと「全体を明るくする」というイメージがありましたが、写真に収めるという観点で「必要なところだけに灯りを、照明を当てる」ということが非常に大切であることがわかりました。そうすることで境内全体も幻想的になりまして、私は最近ではこの少し暗めの境内の方が好きになってきています。

ライティングの修正は、目で見るとあまり変わらないかな、と思っても、写真を撮ると違うということがわかりますよね。

百々氏:副住職の吉田さんが、ライティングに必要な電気系統や既存の照明施設をすべて把握されていて、ディレクターとして大聖院の皆さんに指示を出されたことで、上手く調整できたと思います。

続いて、「お金を落としてもらう仕組み」についてお話を進めてまいります。
「お金を落としてもらう仕組み」には、「単価を上げる仕組み」と「商店街や自治体全体で稼ぐ仕組み」の2つがあります。

1. 単価を上げていく仕組み

吉田氏:大聖院としては、稼ぐ、ということではなくてですね。コロナ禍で昨年から、宮島の旅館やホテル、商店街の方々がかなり困っていらっしゃって、どうしようか、というご相談をいただいておりました。その中で、何か夜のイベントを企画できないかと周りの皆さんと相談した結果、上手くことが運びました、という次第です。

大聖院としては、写真撮影だけ、拝観だけ、ということではなく、せっかくお寺を公開しますので「祈り」や「手を合わす」ということを行っていただきたいという思いがあり、その思いを東京カメラ部に打ち明け、一緒に仕組みを検討しました。

そもそも大聖院には「一眼大師(いちがんたいし)」という、一つだけ願いを叶えてくれる仏さんがいらっしゃいまして、写真に写っているこの赤いだるま絵馬に願い事を書いて願をかけるというお参りをされる方が多くいらっしゃいました。
今回、初めての方にもわかるように、入り口で全員にこのだるま絵馬を拝観料と合わせてご購入いただき、お参り前にも必ず「一眼大師」に行っていただくモデルコースを作りました。
拝観料2,000円には、拝観証としてのだるま絵馬と拝観記念品のお守りの費用が含まれています。私は、最初は2,000円って少し高いんじゃないのかな、と思っておりましたけれど、私どもも道中をご案内させていただき、おかげさまでアンケートでは非常に満足度が高く、ちょうどいい価格設定だったのかな、と振り返ってみて思うところです。

セミナーの文言として「稼ぐ」を使っておりますが、大聖院を祈りの場所として再度認識していただきたいということ、地域の皆さんに貢献したい、というご要望を受けまして、今回は、絵馬を掛けにお寺に来てくださいという企画にし、拝観料にだるま絵馬をセットにしました。
また、東京カメラ部がライトアップをプロデュースしている京都府の仁和寺では、ライトアップ限定のご朱印をお作りになり、ご提供されています。

2. 商店街全体で稼ぐ

今回のライトアップの入場券は、旅館やホテルでも販売なさって「街全体で稼ぐ」に寄与しました。

吉田氏:旅館やホテルの協力を仰ぎ、宿泊してご購入された方々に、拝観料を半額の千円でご提供する”宿泊特券”をお作りしました。

宿泊することで、飲食も、となり、街全体での消費単価が上がります。
東京カメラ部がライトアップをサポートした栃木県足利市では、会場への入場券300円をそのままクーポンとして商店街で使うことができる、というお取組みをされました。「300円」という金額設定は絶妙だなと思っていまして、私自身も、このクーポンにお金を追加して買い物を楽しみましたし、そのような買い物をされている方を多く見かけました。

ここまでは「今稼ぐためには」のお話でしたが、継続していく、先々の「未来稼ぐための投資」として、ファン基盤を作ること、拡散することが大事です。
写真を撮ってもらうだけではなくて、ご自身のSNSにアップしてもらうこと。東京カメラ部のライトアッププロデュースでは、この点を重視しています。

今回のライトアップでも、五百羅漢や摩尼殿をスマホでも撮影出来て、ご自身のSNSにアップしたくなるような、素晴らしい写真を撮れるように企画しました。
また、従来のライトアップイベントでは、被写体にはライトが当たっているが、自分の顔にはライトが当たらず、綺麗な自撮り写真が撮れない、ということをよく見かけます。
東京カメラ部がライトアップをプロデュースするときは、自撮りスポットでは自然と顔に照明が当たるようなライティングをしますし、また他の方に頼まなくても撮影できる「自撮り台」を用意していただくことを主催者の方にご提案します。

このような様々な仕掛けにより、今回の大聖院のライトアップでは、単価2,000円でも1,000人以上の方々にご来場いただき、240万8千円の売り上げとなりました。また、近隣のカフェやロープウェイなど周辺地域にも収益をもたらすことができました。

「開催期間2週間弱、来場者1,000人」の来場者数について、百々さんはどのように受け止めていらっしゃいますか。

百々氏:新型コロナウイルス対策ガイドラインに基づいたイベントってどうしたらいいのだろう、から検討を始め、やはり時間帯を区切ることや人数制限を行うことが必須だろうと考えました。

その前提でどうやって売るか。当初、チケッティングサービスの利用を考えましたが、販売コストがかかりますので、昨年度広島観光連盟で実施しておりましたクラウドファンディング「HITひろしま観光応援プロジェクト」を活用し、チケットを返礼品(リターン)として販売しました。当日申し込みの方が6割強でしたが、ご来場者の約3~4割は、このクラウドファンディングからお申込みいただきました。
ご年配の方からは、クラウドファンディングでの購入が難しかった、というご意見もいただき、販売コスト面では抑えられたもののクラウドファンディングでの販売はちょっと難しかったかな、という感想です。

イベント告知に関しては、広島電鉄の駅等にポスターを掲示しましたが、県外向けには十分な告知ができていない状況であったと考えています。今後は、県外向けのPRや広島に来られてからのアイキャッチ、OOH(Out Of Home)広告を活用した広報活動をしなくてはならないと考えています。

そして、やはり土日のご来場が多かったので、平日のご来場数の底上げのために、ライトアップと合わせて平日ご来場したくなるコンテンツを検討していきたい、と考えています。

最後に、商店街の協力店舗を増やすこと。今回は5店舗ほどご協力いただきました。ただ、実際には予約があったときのみ開店とかイベントのお客様しかいないなかで夜8時9時まで開けるというのは難しい、というお店の事情がありました。
今後は、先ほどご紹介がありました足利市のクーポンのような形で、商店街がお店を開けてクーポンを使えるような送客・収益の仕組みづくりや働きかけが重要だと考えています。

吉田さん、ライトアップを実施してのご感想や、継続実施となる今年の企画でお考えのことなどをお聞かせいただけますか。

吉田氏:2020年のライトアップは、クラウドファンディングでの事前完全予約制でした。1時間50人、1日3回、計150人限定で行いました。天候が読めない、紅葉の進み具合が刻々と変わることなどがあり、事前予約ではなく当日か前日に決めたい人が多いんだな、ということを実感しました。
今年2021年は、事前予約・完全予約ではなく、出来る限り当日でも対応できるようにするともっといろんな方に来てもらいやすいのではないかな、と考えております。

百々氏:昨年は人数が少なかったがゆえに、カメラが趣味の方にとっては撮影がしやすかったというメリットがありましたね。

吉田氏:その点は狙い通りとなりました。拝観料が2,000円になると自然とお越しになる方も落ち着いて来られるので、境内をゆっくりと巡っていただき、写真もゆったり撮っていただけました。昨年は、初回にしてはいい結果だったと考えています。

焦ったのは、昨年の紅葉の進みが予想より早かったことです。

吉田氏:そうです。例年より一週間以上早かったですね。後半、紅葉の終わりが近づいて来て、いつもと様子が違うことが私たちにも分かってきましたので、イベントの終盤の日程でお越しくださる方々についてはどうしようかな、と悩みました。その方々には、私どもがずっとそこに立ってお話をさせていただく・説明をする、ということで、何とかご不満にならないように心がけました。

そして、紅葉して落ちた葉っぱを保管されていました。

吉田氏:東京カメラ部にアドバイスいただきまして。例年は、全部早く掃除して片付けなきゃって掃除をしていますが、今回は掃除したのを貯めておいて、乾かして、それを夕方撒いて。そうするともみじの絨毯になって、また写真スポットになる、ということを教えていただいた。東京カメラ部のプロデュースが本当にありがたかったな、と思っています。

今回のお取組みは、テレビや新聞などマスメディアでも多く取り上げられました。
吉田さんが普段からお付き合いされている方々にお声がけされたのでしょうか。

吉田氏:はい。百々さんの広島観光連盟にもご協力いただきました。

広島観光連盟が制作された、ライトアップの様子をまとめた動画をご紹介します。

百々氏:Web CM用の動画で、約13万人のインプレッションがございました。来場者の1~2割がこの動画を見て申し込んでおり、SNSの動画によるPRとしては非常に成功したと考えております。



弥山山頂での早朝・夜間のインスタミート

感染症対策をしつつ、特別な体験をご提供し、撮影された高品質な写真でSNS拡散

弥山インスタミート

今回施策の2つめ「2.早朝・夜間のインスタミート:弥山インスタミート」について、ご説明します。「インスタミート」とは、Instagramアカウントをお持ちの方々がご参加する「撮影オフ会」です。
弥山の山頂で行われた「弥山インスタミート」では、山頂に一泊し、星空や翌朝のご来光を撮影していただきました。

コロナ禍以前は、1回あたり20人前後の規模で開催していましたが、コロナ禍での実施となった「弥山インスタミート」は、少人数での実施とし、代わりにInstagramのフォロワーがより多い方にご参加いただきました。写真の上手な方にその場所のお手本となる写真を撮影してもらえ、またフォロワー数の多いインスタグラマーからの発信で、撮影した写真が拡散、SNSに投稿いただいた写真には1,000を超えるいいねが付いたものもあり、多くの方に大聖院の魅力が伝わりました。東京カメラ部のSNSアカウントでも告知投稿を行い、写真好きな全国の方々に宮島の魅力が伝わったかと存じます。

吉田さん、インスタミートに参加されていかがでしたでしょうか。

吉田氏:カメラマンの方々が、どのような視点や角度で弥山を切り取って撮影するのか、非常に興味がありました。私たちが普段あまり着目していなかったところにも、カメラを向けていただき、私にとっても新たな発見に繋がりました。また、来られない方々がたくさんいらっしゃる中で、このように宣伝していただいたということは、今後この秋から来年にかけての種まきになったのではないかな、と思います。是非この弥山の景色を見に、皆さんにまた足を運んでいただきたいなと、私自身も非常に楽しみに皆さまのお越しをお待ちしているところです。

百々さん、インスタミートのご感想をお聞かせいただけますか。

百々氏:これまで弥山山頂「庫裡(くり)」の宿泊は、クローズドな集まりのみに提供されていました。今回素晴らしかったのは、これを一般のお客様向けに「観光プロダクト」として開放されたことです。「弥山インスタミート」では、庫裡に宿泊し、その間山頂にいるのは我々のみですのでその空気感、そして星空や朝日を独占して見られる素晴らしい体験だったと思っています。恐らく2~3年後には、インバウンドのお客様が戻ってこられるでしょうから、広島のみならず日本全体の中でも、この体験型の観光プログラムは価値の高いものになり得ると考えています。




弥山の星空と御来光

私どもも、非常に貴重な経験をさせていただきました。2021年もご継続、と伺っています。

吉田氏:はい、継続します。大聖院では、新月と満月の日に弥山の上に宿泊いただいて、星空とご来光を拝む修行体験を実施しています。その一環で、この弥山の夜空と朝日のインスタミートを実施します。今年の実施要綱は、来週以降にホームページ等で告知しますので、ご覧いただき、よろしければ広めていただいたり参加いただければと思います。

詳細はこちらからご覧いただけます(PDF形式)

https://daisho-in.com/pdf/news_20210315.pdf



宮島のフォトスポット開発

既存の場所でもひと工夫で写真映えするように改善できる

最後に、今回の3つめの施策「フォトスポット開発」をご紹介します。
宮島をぐるぐる回って、早朝夜間の時間帯で写真映えする場所探して、撮影しました。
新しい場所を見つけてフォトスポットに、はもちろんですが、既存の場所でもひと工夫で写真映えするような改善はできます。一例をご紹介します。

新たな観光コンテンツとして

こちらは、大聖院の大師堂地下にある人工洞窟の「遍照窟(へんじょうくつ)」です。
上にライトがパーッと並んでいて、もともと写真映えする場所です。

新たな観光コンテンツとして

真ん中に碑がありまして、今回はこの周りに黒いテーブルを置く、という工夫をしました。

新たな観光コンテンツとして

それにより、光が黒いテーブルに反射して、より写真映えする場所になりました。写真をご覧ください。

FAQ

ここからは、視聴者の方からのご質問にお答えします。

Q.ライトアップイベント参加者の属性を教えてください。

百々氏:アンケート結果によると、広島県内65%、広島県外35%と、予想外に県外のお客様が多くお越しくださいました。
宮島は高価格帯の宿泊施設もありますけれども、Go To トラベルで安く宿泊できたこともあり、県外からも多くお越しいただいたのだと思います。

県外は、東京都そして山口や大阪の近隣にお住まいの方、県内は、三原、尾道などからお越しくださいました。

年代層は、40代50代のミドルエイジがメインでしたが、若い方も多くお越しくださいました。

ライトアップイベントは、お寺にお越しいただく、ということがメインのイベントでしたので、吉田副住職をはじめ大聖院の方々が本当に丁寧に気持ちをもって接してくださったことが、外部のイベント運営保安スタッフの方々にまで伝わって、イベント全体でいいおもてなしができたのではないかと考えています。アンケートを拝見し、お越しになったお客様もそう思っていらっしゃったことに感動しました。今後もずっと続けていただきたいという思いを強く持ちました。

弥山山頂のインスタミートは、岡山県、京都府、埼玉県ご在住の方がいらっしゃいました。
ライトアップのイベントは、Web CMや新聞など多くの媒体に出稿したのですが、弥山山頂のインスタミートは、大聖院のオウンドメディアのみの告知でした。それにも関わらず、告知後、すぐに枠が埋まりました。

吉田氏:コロナ禍で定員を少人数に設定していたこともありますが、常にキャンセル待ちの状態で、広告費をかけずに申し込みがあり、ありがたいことでした。もちろん、東京カメラ部SNSアカウントでも告知いただきました。

百々氏:今回「弥山インスタミート」の価格設定は5,000円でしたが、商売っ気が強い我々観光振興サイドとしては、もっとプレミアの高いプロダクトとして、仮に価格1万円でも興味のあるご参加者に多くお越しいただけるのではないかなと考えております。下世話な話になって大変申し訳ないんですけれど。今後は、「三鬼堂(さんきどう:大聖院の堂宇の一つ、鬼を祀っている大変珍しいお堂)」に宿泊、価格設定50万円、それがお布施になる、というようなことも検討の余地があるのではないかと思っています。

Q.初の試みならではの、思わぬ発見などがあれば教えてください。

吉田氏:初めてモデルコースを作ったことが、新たな発見となりました。お参りは皆さんが自由に行かれるところですので、これまでは、こちらからどこどこお参りしましょうと促しはしていなかった。なるべくしないようにしていたんですね。どこに手を合わせていただくのかは自由だと思っていますので。
ただ、近年は若い方など、どのようにお参りをすればいいのかご存じない方も増えています。そのような方々には、今回のモデルコースで、こういうふうにお参りすればいいんだ、こういう意味があるんだということをきちんと感じてもらえて、なんか心がスッとしましたというお声もいただけたので、新たな発見でした。
もうひとつの発見は、コロナ禍で何もせずではなく、やってみてよかったなということです。コロナ禍だから何もしないというのも正解でしょうが、少人数でも動いてみた結果、いろいろわかったこともありました。今年2021年に向けて、私自身も本当に楽しみな取り組みになってきたと思います。

ライトアップをご検討される場合、単純に神社仏閣を会場としてライトアップすればいいというわけではないと考えていますが、百々さん、今回の成功要因をどのようにお考えでしょうか。

百々氏:私は50代で、宮島エリアに住む宮島人の言うなれば「セカンドウェーブ」。私より若い吉田副住職は「サードウェーブ」。宮島の若い人たちがこういう取り組みをやってくださったことに対する感謝と、この宮島の中に情熱と能力をお持ちの方がいらして、コロナ禍の宮島でもこのような新しい動きができたという発見、それが素晴らしく感動しました。

自分だけの利益ではなく地元の人たちに何ができるかという情熱と意思を持った方々を見つけ、一緒にプロジェクトを推進していくことが、成功を左右する非常に大事なポイントである、と私もこのプロジェクトを通じて再認識しました。

Q.ナイトタイムコンテンツとして、お勧めスポットをご紹介ください。

東京カメラ部がお手伝いしている写真映えするライトアップ、という観点でのお勧めは、今回の広島 大聖院、京都府の仁和寺、東京都の昭和記念公園などです。今年実施されるかどうかをご確認いただいた上で、よろしければ是非お越しください。いろいろなところに写真を上手く撮れるような仕掛けがあるはずです。

百々氏:ガイドラインに準拠したイベントとして、広島県観光連盟では「ひろしまナイトミュージアム」を実施しています。印象派絵画の所蔵で有名なひろしま美術館の閉館後に、演劇型で美術を鑑賞するイベントです。
ゴッホやモネなど西洋絵画の作者に扮した役者が観客と一緒に展示室を移動しながら、作品をストーリー仕立てで紹介し、ステージと客席といった形ではなく、演者とお客さまが一体となって楽しめるコンテンツです。
非常に人気が高く、募集した枠は満席となりました。脚本は、映画監督で脚本家の一尾さんが制作し、ひろしま美術館学芸員が監修、絵画の作者役には、地元劇団の役者を起用しています。ウェルカムドリンクとしてシャンパンやクラフトビールをご提供するなど、大人のエンターテイメントになっております。

大聖院のライトアップは2021年も実施しますので、よろしければ是非お越しいただけたらと存じます。本日はありがとうございました。

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