コロナ禍におけるインバウンド施策の最前線

開催日 : 2021年03月03日

協力 日本政府観光局(JNTO)

コロナ禍の現在、そして未来に向けて、今何に取り組むべきかをお考えの皆様への参考情報として、日本政府観光局(JNTO)企画総室 デジタルマーケティングセンター長 吉田憲司さまをお招きして、「コロナ禍におけるインバウンド施策の最前線」と題して本対談を開催いたしました。
本対談内では、コロナ禍における日本政府観光局(JNTO)の現在の取り組みを吉田さまからご紹介いただきました。また、弊社塚崎から、政府、自治体など多数の公的機関SNS運営代行やオンライン、オフラインで日本各地の観光・支援を多数経験している東京カメラ部として、具体例を交えながら以下の点をご紹介させていただきました。

  1. 1)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により集中と効率を追求した既存観光ビジネスモデルは破壊されたこと
  2. 2)新しい観光では分散と高付加価値化が求められること
  3. 3)新しい観光モデルの要件を満たす施策が存在すること
  4. 4)今すぐ、今だからこそ取り組めることがあること

詳細な対談の様子は以下のとおりです。皆様の参考になれば幸いです。
なお、日本政府観光局(JNTO)では、2017年10月にデジタルマーケティング室を発足、またInstagramアカウント「Visit Japan International (@visitjapanjp)」を開設されました。
東京カメラ部株式会社では、本アカウントの立ち上げと運用、フォトコンテストなどのキャンペーンをサポートいたしました。

登壇者

日本政府観光局(JNTO) 企画総室 デジタルマーケティングセンター長 吉田憲司氏

日本政府観光局(JNTO) 企画総室 
デジタルマーケティングセンター長 

吉田憲司

  • 1998年4月~ 大手旅行会社入社。法人営業に従事
  • 2006年5月~ インターネットメディアレップ入社。主にメディア担当として広告商品開発・販売等を通じた媒体社の収益最大化に努める
  • 2016年8月~ 日本政府観光局(JNTO)入構
  • 2017年10月~ デジタルマーケティング室発足とともに室長に就任。組織改編を経て今に至る

東京カメラ部株式会社 代表取締役 塚崎秀雄

聞き手 : 東京カメラ部株式会社 代表取締役 塚崎秀雄

出演者紹介

まず聞き手、東京カメラ部株式会社の代表を務めております塚崎より自己紹介をさせていただきます。新卒で東京証券取引所に入社し、インサイダー取引や国会答弁対応などを担当。その後、戦略コンサルティング会社A.T.カーニーに転職し、大手総合商社や通信事業者などの新規事業戦略を担当。そして、ソニーでウォークマンの商品企画統括、2007年に弊社を創業、「東京カメラ部」を日本最大級(500万人以上)の写真コミュニティーに育てました。毎日約2~4万作品を拝見しています。また、弊社は、大手企業・官公庁を中心としたソーシャルメディアの運営を受託しています。私自身は、写真家ではございませんことをお伝えしておきたいと思います。

吉田さま、自己紹介をお願いいたします。

吉田氏:日本政府観光局 企画総室 デジタルマーケティングセンター長 吉田憲司と申します。私は、1998年に新卒で旅行会社入社、次の転職先で10年間インターネット広告に携わっておりました。そして、2016年に日本政府観光局に入構、デジタルマーケティング室発足とともに室長に就任し、2021年8月で入構5年になります。デジタルマーケティング室、今はデジタルマーケティングセンターという名称になりましたが、入構時より今の業務に携わっております。

東京カメラ部株式会社のご紹介

まず、東京カメラ部株式会社をご紹介します。弊社が運営する「東京カメラ部」は日本最大級の写真好きが集まるコミュニティ、審査制の写真投稿サイトです。
特徴は、

  • 世界中の写真愛好家の方から、毎日約4万作品をご投稿いただいている「東京カメラ部」アカウント。その中から素晴らしい作品を選び、毎日7作品を東京カメラ部のSNSアカウントでご紹介、昨年は延べ11億人の方が閲覧
  • この運営ノウハウを活かし、日本政府観光局様、環境省様、地方自治体様、大手企業様の世界に向けた情報発信を支援。また、Twitter Japan様などSNSプラットフォーマー様からの仕事も受託
  • 投稿写真は、日経ナショナル ジオグラフィック社様から写真集が発売されるほど、レベルの高い作品
  • 幅広い業界でのフォトコンテストの実績多数。一括(企画、募集告知、運営事務局、審査/選定、賞品発送)で受託したフォトコンテストは、150件超

日本政府観光局と東京カメラ部の取り組み

Instagramアカウント「Visit Japan International (@visitjapanjp)」

今回のセミナーに吉田さまをお招きしたきっかけでもありますが、日本政府観光局さんと東京カメラ部の取り組みをご紹介します。東京カメラ部は、2017年10月に開設された日本政府観光局さんのInstagramアカウント「Visit Japan International (@visitjapanjp)」の立ち上げと運用をサポートさせていただきました。

Instagramの開設と運営




「観世能楽堂」でのインスタミート

アカウント開設のタイミングで、開設を記念した日本政府観光局主催「インスタミート」*を銀座の「観世能楽堂(かんぜのうがくどう)」で開催されました。来賓として、当時の観光庁長官、Facebook Japanの代表取締役、Instagram最高製品責任者、人気のインスタグラマー約30名、メディアの方々を招聘しました。日本政府観光局さんが「観世能楽堂」をイベントの場所としてお選びになったのですよね。

Instagramアカウントの告知イベント

吉田氏:そうですね。GINZA SIXの地下にある「観世能楽堂」さんにご協力いただき、普段は公開されない場所やシーンなども特別に写真を撮らせてもらうという特別な対応をしていただきまして、イベントにお越しくださった方々に非常に喜んでいただけました。

この「インスタミート」の後、参加されたインスタグラマーさんたちは、アカウントへの投稿にご協力くださるようになりました。素晴らしいイベントだったと思います。また、いろんなメディアが取り上げてくださって、たくさんの記事が出ましたよね。

※「インスタミート」とはInstagramの利用者が写真や動画の撮影を目的に集まる撮影会のこと






フォトコンテスト「Visit Japan Photo Contest」

また、アカウント開設の翌年早々にフォトコンテスト「Visit Japan Photo Contest」を実施し、約1万件の応募がありました。入賞作品は、SNS投稿や広告のビジュアル、フォトスポット紹介サイトに活用されました。アカウント立ち上げから東京カメラ部が運営をサポートさせていただいていた期間のInstagramアカウントの運営の結果は、24万人を超えるフォロワー数、60万件のハッシュタグ投稿となりました。多くの方が投稿してくださるアカウントとなり、今や「Visit Japan International (@visitjapanjp)」アカウントで運営の方が投稿写真が足りなくてお困りになる、ということはないですよね。

Instagramキャンペーン

吉田氏:おかげさまで、みなさんが進んで投稿くださるので、むしろ選定するのが大変という嬉しい悩みを抱えております。




コロナ禍における現状の制約の整理(東京カメラ部)

コロナ禍においては、いままでの観光モデルは完全否定されています。

現状の整理

今までの観光モデル
  • ハイシーズン(G.W、夏休み、年末年始)に集中し、ピークにとにかく大量の人を送り込む・平準化しない
  • 都心の顧客が中心。この顧客層を地方創生の要としている
  • 個人旅行は増えているが、基本は密にして共有して効率を上げることで費用を低減しているモデル(いわゆる大型バス、高速鉄道、飛行機といった公共交通機関による大量輸送をして、大型食堂、バイキングなど効率的な食事の提供をしていく、が主流)
  • このような旅行を楽しまれるのは、お金に余裕がある高齢者が中心、50歳以上が主要顧客、というのが主なモデル
COVID-19の影響でどうなっているか
  • 大勢を集めてはいけない、都民は自粛してください、医療体制が弱い地方は避けよう、三密は避けよう、共有は避けよう、と、これまで正解だったことが全てNOだといわれるようになった
  • 結果、コストは上がり、価格が上がるのは必然なのにも関わらず、お金に余裕のある高齢者層は自粛してください、という状況

そうした中で「できること、やるべきこと」の話をここから進めてまいりたいと存じます。日本政府観光局ではどのようにお考えになり、活動されていますでしょうか。

コロナ禍で「できること、やるべきこと」
コロナ禍における日本政府観光局の考え方と活動

吉田氏:このような状況下での日本政府観光局の活動をご紹介いたします。
日本政府観光局は基本的に海外の旅行者を日本に誘致活動する組織ではあるのですが、コロナ禍では国内向けの取り組みもしておりますので後ほどご紹介させていただきます。
勿論、コロナ禍においても「訪日外国人旅行者数6,000万人、その方々の消費額15兆円」という2030年の政府目標がありますので、私たちはこれを目指して日々一生懸命活動を行っている、というのが大前提です。

2021年度の主な取組方針(海外向け)

吉田氏: 2021年度における海外向けの主な取組み方針は以下の5つとなります。
まずは「コロナ禍における訪日旅行の不安払拭に向けた情報発信」です。コロナが怖いと思う方がたくさんいらっしゃるので、政府機関として不安払拭に向けた情報を積極的に発信しています。
その情報発信の手段としてSNSやウェブサイトを活用していこうということが「コロナの状況や入国規制の変化に対応した、SNS・ウェブサイトによる情報発信その他の各種取り組みの機動的な実施」でございます。
3つめに「地域産品の物販を含めた地域の観光情報の発信」。これは、日本政府観光局の活動としては異色に映るかもしれませんが、今コロナ禍の期間が長くなってきているので、単純に旅行先としての日本をアピールするだけではなく、JETROさん等とも連携しながら、各地の地域産品の物販というの視点で「ジャパン」というものを旅行者に意識しておいてもらえないか、というアイデアで進めているものでございます。
また、日本で開催される主要イベントは、東京オリンピック・パラリンピックだけではなく、「Adventure Travel World Summit」などいろんなイベントがありますし、日本に関係するオンラインのイベントもたくさんありますので、それらを契機に日本に関する情報発信をしていきたいと考えています。
また、最後の一つとして「上質な観光サービスを求める旅行者やテーマ特化型旅行者の誘客に資する関係者との連携強化」ということも掲げております。






2.コロナ禍における訪日旅行の不安払拭に向けた情報発信

吉田氏:先日プレスリリースを出しましたが、コロナ禍での情報発信としてとても大切な感染症対策をきちんと伝えることができるピクトグラムを作成しました。このピクトグラムは、英語ネイティブが英語で作成したものを14言語に翻訳したものとなっており、どなたでも自由にお使いいただけるよう日本政府観光局のウェブサイトに掲載しております。是非皆様もご活用ください。






2.コロナ禍における訪日旅行の不安払拭に向けた情報発信

吉田氏:私どもデジタルマーケティングセンターの管轄でグローバルウェブサイトを運営しております。コロナ発生当時より、政府が発表する入国規制情報や感染症対策情報等を掲載するページを運用してきておりますが、今後、旅行者がどこに行こうかな、と旅行先を探し始めたときに、もう少し情緒的に日本は安全ですよ、安全に楽しめますよ、受け入れ先も皆さんのことをお待ちしていますよ、というような情報発信の切り口も必要ではないかと考えており、そのような新しい視点でのページを制作しております。






2021年度の主な取組方針(国内向け)

吉田氏:日本政府観光局は、コロナ禍の今は、海外のみではなく、国内向けについても私たちが今出来ることがあるのではないかという考えから、いろんなアイデアを出しながら活動を始めています。
1つめは「JNTOウェブサイト日本語化など国内向け情報発信の実施」です。英語で運営しているグローバルサイトは、自治体さん等から「英語なのでよくわからない」という率直なご意見をいただくこともありましたので、日本語化して掲載するということを実施し、私たちが日ごろどのように海外に向けて情報発信しているかを共有させていただければと考えております。
併せて、スライドの2~5番目の内容についても今だからこそ出来ることとして取り組んでおります。






1.JNTOウェブサイト日本語化など国内向け情報発信の実施

吉田氏:先ほどご説明した内容の具体例です。
グローバルウェブサイトの日本語化など、国内向け情報発信の具体的な例となります。”Experiences in Japan”として公開している英語ページのうち33コンテンツを先行して日本語で公開しております。併せて、他のコンテンツもどんどん日本語化を進めております。よろしければ是非ご覧ください。
インバウンド施策についてどう情報発信をするか、という参考にもなるかと存じますし、場合によっては、一人の日本人旅行者として、こんなところがあるんだ、こんなところが外国人に人気があるんだ、ということも感じていただきたいな、と思っております。もちろん今は、旅行自粛というタイミングですので明けてから、ということになろうかと思います。



日本政府観光局の中期的な方向性

2030年目標達成に向けて

吉田氏:日本政府観光局全体として、コロナ禍でやれることとしてここまでご説明させていただきました。そして2030年の目標に向けて中長期的にはこの資料に記載した方向性で考えておりますので、ご覧ください。

海外向けに活動をなさっている日本政府観光局さんが、日本人向けに日本語で発信というのはインパクトがあります。

吉田氏:日本人旅行者を対象として直接情報発信をするというわけではないのですが、今できることは何か、というアイデアのひとつを形にしたと言えます。

日本政府観光局さんとしては、日本の自治体向け企業向けというビジネス事業者向け発信、ということですね。

吉田氏:そうですね。原則的にはBtoB向けの情報発信であり、その上で願わくば日本人旅行者の方々にも情報が届いて欲しいというイメージです。欲張りすぎですかね?

「消費単価の向上」は、大きな課題ですね。

吉田氏:はい。今日のセミナーにご参加の皆さんは、自治体の方も多いと伺っていますが、そのあたりは、私たちだけではなく、自治体の皆さん、そして国としても課題だと考えています。コロナ禍でこれまでの観光の常識が通用しない環境の中で、場合によっては旅行者数制限をしていかざるをえない場合、消費単価が高くない旅行者だけを受け入れていていいのか、というのは特に地域の皆さんは今悩んでいらっしゃるのではないかな、と思います。

コロナ禍で「できること、やるべきこと」(東京カメラ部)

コロナ禍で「できること、やるべきこと」として、「未来を見据えた取り組み」と「足元を見つめた取り組み」の2つをやったほうがいいのではないか、と私どもは考えています。
未来の来訪者を増やすための投資としての「未来を見据えた取り組み」。もうひとつが、可能な範囲での収入確保として「足元を見つめた取り組み」。
未来への投資だけをやっていては、呼吸ができなくなってしまうので、同時に足元を固めつつ未来への架け橋を架けていく、というこの2つをやったほうがいいと私どもは考えています。

「未来を見据えた取り組み」の「未来の来訪者を増やす準備」として、以下3点が「できること、やるべきこと」ではないだろうかと考えています

  • PRの準備
    • 人がいない今だからこそ、観光素材を撮影することが可能です
    • 発信のための素材の準備を、今のうちに積極的に行うことを推奨します
  • 写真撮影スキル向上
    • 恒常的な情報発信の観点から、(プロのカメラマンのみではなく)一般の方のご協力を得ていかないと公共団体では特にコストの面で継続が難しくなりがちです
    • お客様の少ない今なら、飲食店や宿泊施設の方、職員さんの写真撮影スキルを上げる時間を確保することが可能ですので、撮影スキルを磨くべきでしょう
  • SNSでの情報発信
    • お客様に旅行先として存在を忘れられないように、「来られるようになったら来てね」と定期的に発信することが大事です

「可能な範囲での収入確保」の「足元を見つめた取り組み」として、「できること、やるべきこと」として、以下のような取り組みができるのではと考えています。

  • 夜間・早朝観光の開発
    • コロナ対策を行った上で、今来られる方々にお金を落としてもらう仕組み、マイクロツーリズム対策としての夜間・早朝観光の開発
  • お土産・特産品のオンライン販売促進、ふるさと納税確保
    • 地域の情報の発信を行いファンを獲得し、そのファンに対して地域の応援を呼びかけ






具体的な例を見ていただきたいと思います。「PR武器の準備」の具体例です。

未来の来訪者を増やす準備:PR武器の準備

  • 以前は人の混雑で、飛騨高山や京都などでPR素材撮影は困難でした。撮った瞬間も大量に人の顔が写ってしまい、これをどうやって処理するのか、写った全員に許可を取るのか、など課題がありました
  • 美しい青色の絨毯として人気の青のネモフィラも人が写らないように撮影するには、開門と同時に走って撮りに行かなければなりませんでしたが、今なら撮影できます
  • 観光客が少ない今だからこそPR用素材撮影のチャンスです





「撮影スキルの向上」の具体例です。

未来の来訪者を増やす準備:写真撮影スキル向上

  • PR素材の撮影をプロにばかり頼んでいたら、コストが持たず、継続できなくなってしまいます
  • 継続発信のために、地元の皆さんが撮影のスキルを上げていくことをお勧めします。スマホでもある程度は綺麗に撮れますし、ライトの調整や少し画像の加工など撮影方法を覚えればかなりキレイな写真が撮れます。撮影スキルを向上することで、低コストで新鮮な情報を頻度高く継続的に発信できます

そして、撮った写真を是非「SNS発信」なさってください。来られるようになったら是非来てね、という発信を定期的に行って、ファンの関心を保ち忘れられないようにすることが大事です。

  • ドイツ観光局では、”The city is waiting to be discovered by you.”「来られるようになったら来てね」という発信を定期的に行って、ファンからの関心を保ち続けるようにしています。このような発信を続けていただくことが、「未来の来訪者を増やす準備」として必要になります。
  • ニュージーランド観光局も、”What is your dream #NewZealand road trip?”という文で、いつか将来来ていただく、という前提でメッセージしています。そうすると、ファンから行きたいなぁとか、行ったことあるよ、というようなコメントも入ってきます。このような発信をしていくことは、今の状況の中で、各自治体においても十分にできます。ぜひご検討いただきたいと思います。







また、「可能な範囲での収入の確保」として「夜間・早朝観光の開発」は、コロナ渦で「できること、やるべきこと」の一つです。

可能な範囲での収入の確保:夜間・早朝観光の開発

  • 「写真が映える」と言われている時間帯は、夜間と早朝です
  • 昼間は、実は、写真を本当に撮りたい人は撮りに行きません。光が悪いからです。真上から照らされて強い光なので、顔に濃い影が落ちてきますし、また昼間の天気というのは、青みがかっています。そうすると、肌の色も綺麗に出ません。よって、早朝や夜間のほうがきれいな写真が撮れるのです。また、昼間は観光客が大勢いらっしゃいます
  • 国内外のお客様いずれも「観光したい人」と「写真を撮りたい人」は、行動時間帯が分かれるので、これをご理解いただいてメニュー開発すれば、密を避けられ満足度も上げられます
  • 「夜間・早朝観光の開発」はコロナ対策になった上で、Go To Travelが今後復活しても、この熾烈な競争に一歩差がつけられますし、近隣の住民の方を対象とした「マイクロツーリズム」に組み込めば、宿泊をしてもらう可能性が高まります
  • 東京カメラ部では、この「夜間・早朝観光の開発」を世界遺産「仁和寺」様、「昭和記念公園」様と行った実績がございます








「可能な範囲での収入の確保」として、「オンラインでの発信」も、コロナ渦で「できること、やるべきこと」の一つです。北海道東川町さんのオンライン発信の例をご紹介します。

可能な範囲での収入の確保:オンライン販売促進・ふるさと納税の確保

東川町の町長と東川町在住の写真家の方をお呼びし、東川町の魅力を写真で伝えたオンライン配信を実施しました。動画は、12/27の時点で2万3千回再生され、たくさんの方がご覧くださいました。写真を使うことで、現地の魅力は伝えられます。写真の場合は、その場に行かないと撮れないので行動に結びつきやすいのです。この時もオンラインストア・オンラインで買える商品のご紹介、ふるさと納税の遍歴をご紹介しました。そうすれば、今すぐ来てよと言えない、例えばまだ関東圏で緊急事態宣言がいつ解除になるかわからない状況ですから、東京の人にすぐ来てくださいと言えない場合でも、オンラインで買えますよ、という取り組みであれば十分可能です。




可能な範囲での収入の確保:オンライン発信

フォトコンテストを開催し、産品をフォトコンテストの賞品にすることで、産品のキャンペーン+PRが可能です。
スライドの「山形日和。」フォトコンテストは、やまがた観光推進協議会様主催で、私どもがサポートさせていただきました例です。山形の素晴らしい写真を集め、将来のPRの素材にするとともに、優秀賞には山形のお土産をご提供することで、山形にはこんなものがあるんだ、ということを認知していただけます。




お客様に、「知ってる人」→「観光で来た人」→「リピーター」→「ファン」→「移住」→「定住」のようなファネルの階段を登っていっていただく取り組みを写真やSNS発信を通じて行い、また、移住まではいかなくとも、多くのファンを作ることでオンライン販売、ふるさと納税の確保につなげていただけたらと考えています。
この時にキーとなるのが「写真」です。今SNSで結局ユーザーの反応率を分けるのは投稿される写真。投稿文で反応率を上げるのは極めて困難です。多くの方はスマートフォンで情報を受信しており、小さな文字で大量に書いてある文章は読みません。どれだけ訴求力のある写真で発信するかが大事です。



東京カメラ部の地域創生事例など

最後に、弊社の事例をご紹介します。

環境省様国立公園

環境省様 国立公園

環境省様の国立公園アカウントでは、SNSでの発信を粛々と続ける一方で、PRのための素材集めも行っていらっしゃいます。国立公園も特にコロナの問題もあって、関東を中心とした大都市圏の方々に積極的に来てくださいとは言い難いですし、またこの国立公園のInstagramアカウントは海外向けですので、海外から国立公園にお越しください、とは発信できないわけです。渡航制限、2週間隔離がありますので。”We look forward to your participation!⠀”の呼びかけをしながら、忘れないで、ということと、投稿をお待ちしています、という発信をしています。




環境省様 国立公園

”It's never too early to start planning your next adventure in Japan's national parks.”このように、国立公園を忘れないで、プランニングだけでもしておいてね、待っていますよ、と、訪日旅行経験者の参加促進、再訪のための動機づけの投稿をしています。




環境省様 国立公園

日本の国立公園フォトコンテストも開催しています。昨年も実施、6月に募集を開始して約半年間が募集期間、PRしながら素材を収集しています。日本の全国立公園の写真を集めることに成功しています。




環境省様 国立公園

私ども東京カメラ部では、オンライン上で写真の一元化管理ができるシステムを自社開発しています。クライアントである環境省様には、このシステムにログインしていただき、写真をご確認、私どもで投稿する、という方法で活用しています。
一般ユーザーの方に写真を投稿していただくだけでなく、「フォトアンバサダー」を任命、PR写真の投稿も行っているとレンジャーさんにもご投稿いただいて撮影技術についても伝承しています。東京から「フォトアンバサダー」を派遣することは、今はなかなか難しい状況ですので、地方在住の方、その地域にお住まいの方、もしくはコロナがほぼ発生していないような地域のフォトグラファーをお送りするといった取り組みをしています。どうしても東京から派遣しなければならない場合は、検査をした上で隔離をしながら送るといったことを行っています。




世界遺産 仁和寺様、大聖院様

仁和寺・大聖院

仁和寺様、大聖院様との取り組みもございます。
世界遺産の仁和寺でも夜間・早朝観光活性化のためのライトアップを企画し、現地にお金が落ちるような取り組みをしています。
昨年は、仁和寺様に加えて、広島県宮島の大聖院のライトアップ事業を行い、テレビなどメディアでも取り上げられました。コロナ禍で宮島の大聖院も厳しい状況でしたが、ライトアップで皆様にお越しいただき、お金を落としていただくことにご協力いただきました。




北海道美瑛町

美瑛町Facebookページ

美瑛町Facebookページ

美瑛町Facebookページ

弊社では、一般の方からの写真を紹介する、北海道美瑛町のFacebookページも運営しています。このページでは加えて、お得な地域の名産品の情報、移住定住のイベントのPR情報などを投稿しています。このFacebookページには、美瑛町のファンの方が集まっていますので、このような「PR」は、その方々にとっては「情報」として受け止めてくださいます。
SNSのPR投稿で大事なのは、ファンの方々にとって、不愉快ではない形にして情報を発信すること。PRではなく、有益な情報提供として捉えていただくことが大事で、そうすると、受け手の人を選んで提供することが大事であると言えます。このようなファンページを作って、ファンの興味に沿った発信をすることが必要です。




フォトスポットサイト

環境省国立公園フォトスポットサイト

国立公園に関しては、「フォトスポットサイト」のページを制作しています。ユーザーがこの国立公園の写真きれいだなと思ったら、その場所がGoogleマップ上でどこかというのがすぐ分かるようなページも作っています。海外の方は日本のどこでこの写真が撮れるか、場所を知りたいわけですので、このような情報提供をすることによって、そこに来てくださる可能性が高まります。国立公園のフォトスポットサイトの場合は、日本政府観光局様へのリンクも貼っています。




岩手県フォトスポットサイト

岩手県フォトスポットサイト

岩手県様でもフォトコンテストに応募していただいた作品をベースに「フォトスポットサイト」のページを制作しています。岩手県を訪れたときに、フォトスポットサイトで場所をクリックし、写真にマウスオーバーすると観光情報も出てきます。地図が出ていますから、じゃあここに行って撮ろう、ということになります。




岐阜市フォトスポットサイト

岐阜市様でも「フォトスポットサイト」のページを制作しています。岐阜市様の「フォトスポットサイト」ページは、テーマ別にご紹介する内容で構成していますが、どの場所でどのような写真が撮れるか、お勧めの見ごろの紹介や撮影マナーの紹介などの情報発信をしています。実際にまずは今集めている素材を使って皆様に来ていただく。これはGoogleマップですからここで掲載している文字を英語化すれば、海外の方向けにも発信できます。
弊社ではこのように写真データベース、サイトをご提供しています。今だから撮れる写真がたくさんありますので、チャンスとしてこのような活動をしています。




ここからは、セミナーご参加者からのご質問にお答えしてまいります。

Q.「コロナ禍における、地方都市の今後の観光/移住の見立て」

「コロナ禍における、地方都市の今後の観光/移住の見立て」については、いかがでしょうか。

吉田氏:私たちが運営しているSNSの投稿やウェブサイトのアクセスを見ると「ネイチャー」や「(都市部ではないという意味での)地域」への関心は前から増えているな、と思います。いろんなところで言われていますが、密ではないところのニーズは当然ある、と言えます。ただ、そこに対して、本当に人が動いていけるかというのは、コロナの状況やワクチンの問題もありますけれども、従前よりあった二次交通の問題とか別の課題も当然あります。また、ニーズ自体はあるのだけども、その旅行者需要を他の国ではなく日本として取りきれるかということや、日本に来た人たちを各地域がどう取っていけるか(回遊させていけるか)といった課題もあるかと思います。総論的には「需要はある」、ただ、それを本当に自分たちが取れるかというのが勝負、ということではないかと考えます。

Q.「インバウンドの市況」「コロナ後のインバウンド需要」

ご質問「インバウンドの市況」「コロナ後のインバウンド需要」は、いかがでしょうか。

吉田氏:今の市況自体は、世界的にもまだ動いていないというのが色々な報道や日本政府観光局の海外事務所が伝えてくる情報からも言えることです。もちろん、それが今後ワクチンによってどうなるか、ということはあります。よって、インバウンドに関して、日本だけ取り残されているということではありません。旅行したいと思っている方はたくさんいらっしゃると思います。一部の方は、旅行よりもオンラインでこんなことも出来るんだと気づいたり、近くにいいお店があったからそんなに旅行しなくてもいい、やっぱりコロナは怖い、ということで若干旅行自体を敬遠する方が増えることはあると思います。ただ、潜在的には私たち自身が、やっぱり旅行したい、そろそろ出張したいなどと思っているように、人間の欲望のひとつとして「旅する」というのは必ずありますので、総論としては、インバウンドの需要は上がる、と思っています。
コロナ禍以前の大事な論点でもありましたように、日本の人口がどんどん減っていくなかで、世界的に増えていく旅行者を捉えなければいけない、ということがあるかと思います。当時話していたのは、2030年には18億人の方が海外旅行するようになって、そのうちの主たる旅行者層は東南アジア、東アジアにいらっしゃるので、日本は地理的に有利だよね、ということで、この方々にぜひ日本に来てもらえるようにしたい、ということでした。需要自体は必ず上がると私たちは信じていますし、その需要は絶対に取らなければいけないというのが全体論かな、と。ただ、それぞれの地域や施設の方々は戦略の見直しの中で、国内の旅行者と海外の旅行者の比率を変えていこう、というようなことはあるかと思います。インバウンドの需要が戻ってくるのは自明で、ただ、いつ、どこの国から戻るかについては、それぞれ今後見ていくしかないかな、と思います。

Q.「SNS運用でのターゲット設定」

セミナーご参加者からの東京カメラ部へのご質問「支援するSNS運用(今回はInstagram)でのターゲットの設定の仕方」についてお答えします。
東京カメラ部株式会社では「東京カメラ部」のSNSアカウント以外にも、被写体/テーマ別の海外向けを含む複数のSNSアカウントを持っておりまして、それぞれのアカウントで集めたファンに向けて発信や広告配信をしております。個人情報保護の問題で、クッキーの使用制限など制限がどんどん進んできておりますので、ウェブ広告でのターゲティングは今後ますます困難になってくるだろうと想定しています。そのような時に何が必要になってくるかと申しますと、興味やテーマごとのセグメントのファンをそれぞれのSNSアカウントごとに集めて捉えていくことだと思います。そして、そのセグメントのファンに向けて、向いた商材やサービスをご紹介・ご提供していく。ご興味のあるコト軸に集まっているセグメントと分かっていますので、そこに対して発信していく、ということです。広告配信も各アカウントごとに、写真への反応を見ながら検討をしています。
日本政府観光局のSNS運用では、ターゲット設定をどのようにお考えですか。

吉田氏:日本政府観光局は、比較的全方位的なもので、いろんなターゲットを持っていると思っています。市場についても全方位。もちろん20ぐらいの重点市場や今度新しくメキシコやドバイに海外事務所を構えますので、重点市場は少し増えますし、ターゲットは広めにとっています。そのなかで、例えば、趣味趣向については、アドベンチャーが好きな方もいれば、カルチャーが好きな人もいる、フードが好きな方もいて、そういう意味でも私たちはターゲットは広く取っていますので、それぞれのターゲットに対してどうメッセージを発信していくかというところが大事と考えております。
社内でよく言っていることでありますが、「ターゲット」「タイミング」「クリエイティブ」の3つ、あとは加えて「メディア」か「プラットフォーム」の計4つのフレームワークの組み合わせで物事を考えていけば、比較的シンプルに考えることはできます。そのフレームワーク上で、Instagramが本当に必要かどうか、を検討する必要があります。ターゲットによってはInstagramは必要ない、という選択肢もあるでしょう。

そうですね。ターゲットや国、SNSの特性によってどの手段を使うかは変わりますね。手段はともあれ、ファンの方とつながっている、ということが重要です。ただ、手段は色々ありますが、どの場合でも「クリエイティブ」が極めて重要で、スマートフォンという比較的小さい画面で閲覧されることが多いSNS運用ではそれが「写真」であることは言うまでもありません。

Q.「訪日外国人を納得させられる、具体的な日本のコロナ対策の内容」

ご質問「訪日外国人を納得させられる、具体的な日本のコロナ対策の内容」については、いかがでしょうか。

吉田氏:トリップアドバイザーさんが出されたレポートによりますと、国によって衛生対策も気にするポイントと気にしないポイントがそれぞれ異なるようです。よって、ターゲット国をきちんと決めて、その方々をお迎えするためにその気にされるポイントに沿った対策を打つ、そしてそれをちゃんと伝えていくことがひとつでしょう。
もうひとつは、旅行者は出発する自分の国の基準と比べて、ここは安全だ、とか、ここは危ないな、ということで旅行先を検討していらっしゃるということが、私どもの調査結果で出ています。コロナの押さえこみが出来ていると報道されている国から見ると、日本の衛生対策は緩いと見えているようでして、緩いから楽だよね、あるいは、緩いからなんか危ない国だな、と思われるかもしれないので、そういう意味では一律的な対応は難しいですし、対応リソースは限られていると思いますので、インバウンド誘客という視点では、ターゲット国の対応水準にきちんと合わせていく、そしてそれを伝えていく、そしてその発信をどの手段でやったらいいのか(Facebook、Instagram、ウェブサイトなど)というのを考えましょう、ということではないかと思います。

本日は、貴重なお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。

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